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「恋歌」 朝井まかて (講談社)
樋口一葉の歌の師匠であり、明治の歌人として知られた中島歌子(本名・
登与)は、幕末、水戸藩出入りの宿屋の娘であったが、初めての恋を貫き
天狗党の志士に嫁ぐ。尊皇攘夷の急先鋒だった天狗党が暴走し弾圧さ
れる中、登与は夫と引き離され、自らも投獄されることになる。
後に歌塾「萩の舎」主宰者として一世を風靡し多くの浮き名を流した歌子
は何を思い胸に秘めていたのか。 第150回直木賞受賞作。
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歌子の弟子・花圃が、歌子の入院中に手記を偶然見つけたことから物語
が始まります。花圃が手記に没頭していくのと共に、読者も手記の世界に
引き込まれていきます。手記の内容は、歌子(本名・登与)が水戸藩士に
嫁ぎ、天狗党と諸生党等の抗争により夫を失い投獄されながらも生き延
び、後に歌人として活躍する明治期迄です。
“天狗党の乱”は無知ゆえ本作で初めて知りました。本作だけでは真相が
よくわからず、解説サイトなどをいくつか読み歩きました。
処罰の大きさ故、これまでに知らなったことが不思議です。真相が馬鹿馬
鹿しすぎて主軸になりにくいのでしょうか・・・。
直木賞受賞作ですし、ぜひ映像化していただきたい作品です。
(★★★☆☆)
「血の裁き(上)」
「血の裁き(下)」 ロバート・ゴダート (講談社)
高額な報酬に惹かれ過去にセルビア民兵組織リーダー・ガジの生体肝移
植を成功させたことがある高名な外科医ハモンドの前に、ガジの娘が現
れた。大量虐殺を繰り返し戦争犯罪人として逮捕された父親の財産の隠
し場所を知る組織の元会計係を探してほしいという。脅迫されたハモンド
は仕方なく会計係を探すことになるが、何人もの復讐心といくつもの強欲
がからみあい、行く先々で死が累々と積み上げられていく。
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舞台はボスニア・ヘルツェゴビナ内戦後のセルビア。過去に高額な報酬で
行った手術により、戦争犯罪人の隠し財産をめぐる抗争に巻き込まれて
しまう、中年のイギリス人医師が主人公。この主人公、かなりマヌケで、
次々にいいように踊らされ、行き当たりばったりの行動と結果に、終始
イライラさせられました。 それから、過去の生体肝移植が事の発端な訳
ですが、ドナーのことは最初から一切触れられていないことに違和感があ
り、結局それが最後の種明かし的に使われたので、読者に気が付かれた
ら台無しだよな〜と、軽い失望で読み終えました。 とはいえ、最後のシー
ンの切り方は秀逸でしたので、それが唯一の救い・・・。
(★★☆☆☆)
「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」 (汐文社)
2012年ブラジルで、環境が悪化した地球の未来を話し合う国際会議が
開かれた。各国代表者は順番に意見をのべていくが、これといった名案
は出ない。会議の終盤、南米の国ウルグアイの番がやってきた。演壇に
立ったムヒカ大統領は質素な背広にネクタイなしのシャツ姿。そう、彼は
世界でいちばん貧しい大統領なのだ。小国の話にそれほど関心をいだい
ていなかった会場の人々であったが、ムヒカ大統領の演説が終わったと
き、大きな拍手がわきおこった。
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南米ウルグアイのムヒカ大統領は、給料の大半を貧しい人のために寄付
し、公邸には住まず町から離れた農場で奥さんと暮らしている。花や野菜
を作り、古びた愛車を自分で運転して仕事に向かう。身なりをかまうことな
く働く大統領を、国の人びとは親しみをこめて「ペペ」と呼んでいる。
2012年ブラジル・リオデジャネイロで開催された地球の未来の環境問題
を話し合う国際会議で、南米ウルグアイのムヒカ大統領が行った演説を
子ども向けに分かりやすく書いた絵本。
絵本という手法を用いた大人向けの書籍であるとも思う。
(★★★★☆)
「フォルトゥナの瞳」 百田尚樹 (新潮社)
幼い頃に両親と妹を亡くした木山慎一郎には友人も恋人もいない。
一日中働き、夜眠るだけの日々。夢も自信も持てない孤独な人生だった。
ある日、彼は「死が間近に迫った人」の姿が見えることに気がつく。
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この先どうなるのかと、予測できる部分とできない部分のバランスが自分
に合っていて、最後の一歩手前まで面白く読み進められた。なぜ最後の
一歩手前かというと、エピローグの落ちに最悪ガッカリしてしまったから。
エピローグのせいで全てが台無しになるって、こういうことだと思います。
(★★☆☆☆)
東武東上線の成増が舞台らしいのですが、ほとんどどこだか分かりません。話の内容は全くアレでゴダードの様な展開は望めませんが、一つだけ先読み出来なかった伏線がありました。昭和な雰囲気プンプンなんですが、スマートフォンが出てくるから最近の作品なんだと思います。